抗がん剤による治療をされている患者さんの主治医である上級医のA先生は、

 その地区で開かれる、超長距離のマラソン大会には必ず出場しています。

 もう若くはないのに、(見た目からしても)

 明らかに運動は得意そうではないのに・・・。


 一度、私はその先生に聞いてしまったことがあります。

 『先生、何でそんなに無理してまで毎年マラソン走ってるんですか?

 そろそろ洒落にならない年齢ですよ?死んじゃいますよ?』
 

『馬鹿、わしはまだ死なん!
 マラソンで患者さんの辛さを少しでも分かるかもしれないだろ?
 長年医者をやっていると、痛みの感覚がわからなくなってしまうんだよ。
 患者の痛みのわからない医者は駄目だ、
 マラソンはな、抗がん剤治療と比べてゴールがあるし、走りきったら終わりだ。
 そういった意味では、まだまだ全然甘いかもしれん。
 でもな、走ってて辛くなって、死にそうに感じた時に、
 患者さんはこの辛さよりも辛い思いをして頑張ってくれていると感じることができる。
 その実感を持たないとな、患者さんの傍にはいたらいけないと思うのだよ・・・。』


回診の時も患者さんから、

『先生、今度の○○マラソン出るんですね??名前が新聞に載ってましたよ!!

 先生、もう年なんだから、死んでしまいますよ(笑)』

と笑顔で声をかけられて、穏やかな時間を共有していた。
 

A先生『死ぬかもしれんけどな!!

    わしも頑張るんだから、(患者)さんも頑張らんといけんよ!!』
 

患者A『そうですね、私も頑張らないと!!』

患者B 『退院したら、みんなで一緒に走りたいね』

患者C『みんな元気になりすぎでしょ(笑)、でも頑張ってみんなで退院しよう』


こんなやりとりを見て、私は不覚にも涙ぐんでしまい、

来年のマラソン大会は出場することになってしまいました・・・・・。
生まれてから5km以上走ったことありませんが・・・。