臨床現場では、医療者がどんなに気をつけても、必ずトラブルが生じます。
うっかりミスであったり、純粋な事故であったり、
はたまた患者さん側の純粋な誤解であったりします。
人はミスするもので、過誤による医療事故はゼロには出来ません。
 
研修医であっても、トラブルに巻き込まれないとは限りません。
しっかりと対応を覚えておくと良いと思います。

医学生時代、研修医の先輩から、
『 うちの病院は、激務だから医療訴訟も研修出来るよ』
と洒落にならないことを言っていました。 
実際に訴訟に発展したケースもあるようです。

なるべくそうした事態にならないよう、しっかり学習しましょう。 

基本的に、医療者側のミスそのものだけに腹を立てて、
裁判を起こしている例は少ない
と言われています。
 

医療事故前後の医療従事者の言動に腹を立てて裁判を起こしている事例がほとんどです。

何よりも、患者・家族の心情を配慮しなければなりません。

 病院内で心肺蘇生を実施する場合、乳幼児や小児では特に、
 家族を蘇生の現場に立ち会わせることは精神的な面からも有用です。

 

 患者を愛している家族もまたもう1人の患者である。

 (The M and M Files, Frank J Edwards
 

 【患者さん(その家族)が訴える時は、どんな気持ちか】

・謝って欲しい

・真実を説明をして欲しい

・責任の所在をはっきりさせて欲しい

・2度と同じ過ちをおかして欲しくない

・償いをして欲しい

※患者さん・家族が訴える時の気持ちは必ず知っておきましょう。

【医療者として重要なこと】

・医師として大事なのは、知識・技術・姿勢であることを自覚する。

・自然に心情を配慮した言動が出来ること
( 演技が板についてくること)

・本当に患者・家族の心情がわかること

・自分の人生経験が増えること

・姿勢が良い先輩の言動をまねること

・姿勢も大事だと認識すること

 


【トラブル対応5項目】

1.謝罪

2.嘘のない真実の説明

3.責任の明確化

4.再発防止策構築の約束

5.償い

 

 
1.謝罪について

【質問】謝罪をしたら、裁判で不利になるか?

 ・謝ったら、負けを認めたことになるから、
 下手に謝らない方が良いと世間では言われることがあります。


【結論】

・裁判では診療内容の事実だけが追求されるものなので、
 謝罪したからといって裁判で不利になることは考えられません。
 救命出来なかったことに関して医療従事者として、
「すまない、申し訳ない」という素直な気持ちで謝罪するのは、
 人間として当然、自然なことです。
 そもそも遺族は謝罪しない医師の説明など聞いてくれません。
 自分の過ちで患者、家族を傷つけた時は、1人の人間として謝罪することが重要です。

 

【謝罪の仕方】
 

1.期待に沿えなかったことに対する謝罪(過誤・ミスがないと自信がある場合)

 
 今回は、私共の病院を利用していただいたにも関わらず、
 ご期待に沿える診療とはほど遠い結果になり大変申し訳ありません。

<事実経過とともに、悪い結果を避けることが極めて困難であったことを説明する>

 

 

2.手抜かり(ミス)で不利益を与えたことに対する謝罪

 今回は私共の手抜かりで、患者さんや御家族に大変なことをしてしまい、
 謝罪の言葉もありません。大変申し訳ありません。

 経過を説明し、過誤(ミス)の有無に関して、
 病院として検討する時間をいただきたいと依頼する。

 過誤(ミス)があると判断された場合には、病院としての謝罪があることを伝える。

 経過を説明し、責任の所在を明確にして、過誤(ミス)で結果が悪くなったことを謝罪する。

→特定の部下の責任にし、自分には責任がないという言い方をすると、
 反感がもたれて、説明を聞いてもらえなくなる。
 また、部下という味方を失ってしまうのため、気をつけましょう。

 
 例)今回の出来事はXXXだけでなく,同じ時間帯に看護師を指導、
 監督する立場にあった〇〇医師、そして彼等を統括する責任者である
 私の共同責任でございます。言うなれば、私共の部署全体の責任でございます。

 

 病院としての謝罪、警察への連絡が進行中であることを伝える。

 再発の防止策の検討を約束する。


 例1
 二度と同じことが起きませんよう、今回の出来事を検討させていただき
 再発防止のための対策を講じることをお約束致します。
 対策が決まりました際、こちらからお知らせいたします。
 

 例2
 二度と同じことが起きませんよう、外部の委員も加わって
 事故調査委員会を発足し、今回の出来事を検討させていただきます。
 その際に再発防止のための対策も話し合われます。
 事故調査委員会の報告がまとまり次第、ご遺族にも説明させていただきます。


5.償いについて 

 償い(補償)に関しては病院トップの判断に委ねられることを伝える。

→勝手に口約束で言わない。結論は病院のトップに委ねる!!

例)
 償いに関しましては、私が申し上げられる立場ではございませんので、
 お許しください。償いは病院長、顧問弁護士によって決定されることでございますので、
 どうかご理解の程、御願い申し上げます。

 

※医療事故が起きた時、絶対に隠蔽・取り繕いはしないようにしましょう。

その理由としては以下のことが挙げられます。

・患者・遺族の望み

・倫理的な義務

・医療過誤訴訟を減らす

・医療制度への信頼の回復

 

【研修医がミスした時のための一口メモ】

・正直にミスを認めて、言い訳をしないで謝罪する。

→下手にとりつくろうと、逆にややこしくなるため。

・同じミスをしないための対策を自分で考えて指導医(スタッフ)に報告する。

・ミスを受け入れて許してくれた上司、周囲の人達に感謝する。

・ミスをした自分を責めすぎない。

・将来、ミスをした後輩にどう接したらいいか、この機会に考えておく。