欧州心臓病学会(ESC)と欧州動脈硬化学会(EAS)により、脂質異常症管理ガイドラインが策定されました。
 脂質異常症は、臨床の現場では非常によく遭遇するため、避けて通れません。この度のガイドラインでは、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値が明示されていて、臨床をする上で非常に参考になるため、一度しっかり学習しておきましょう。

 改訂脂質異常症管理ガイドライン(GL)では、従来通りCVDや糖尿病、慢性腎臓病、家族性高コレステロール血症のない40歳以上の無症候の男女に対し、SCORE(Systematic Coronary Risk Evaluation)などの評価ツールを用いて致死性CVD(CardioVascular Disease心血管疾患)の10年リスクを算出することを推奨しています。

 全体的な心血管リスクの程度は、既にCVDや高血圧などの危険因子を伴う糖尿病、進行したCKDがある患者やSCOREによる致死性CVDリスク10%以上の者が該当する「極めて高リスク」からSCOREによる致死性CVDリスクが1%未満の「低リスク」まで4段階に分類しされています。2011年のGLからの変更点は、腎機能によるリスク分類が細分化され、以前はGFR60mL/min/1.73m2未満が「極めて高リスク」に分類されていましたが、今回のGLでは同30mL/min/1.73m2未満が「極めて高リスク」に、同30~59mL/min/1.73m2未満が「高リスク」に分類されています。

 2011年のGLではLDL-C 70mg/dL未満でも心血管リスクが「高リスク」の場合には生活習慣への介入に加え薬物療法も考慮可能とされていましたが、今回のGLでは「脂質への介入は不要」となるなど、一部に変更があります。

 LDL-Cについては、従来通り管理目標値が維持されています。また、LDL-Cが低下するほどCVDリスクが減少するとのシステマチックレビューやLDL-Cをどこまで下げると利益が見込めなくなるのか、あるいは害が生じるのかは明確にされていないことなどが考慮されており、少なくとも心血管リスクが極めて高い場合には、可能な限りLDL-Cを低下させることが適切であるとの見解が示されています。


 食事療法や薬物療法によるLDL-Cの低下度には個人差があるため、脂質管理では個別化アプローチが求められますが、目標値を設定することで『心血管リスクの低減に向けた具体的な対策が分かりやすくなる』『患者と医師の間でのコミュニケーションが深まる』『治療へのアドヒアランスも高まる可能性がある』ことなども重要と考えられています。

 『極めて高リスク』、『高リスク』では、目標値に加えて『脂質低下薬を使用しない状態でLDL-Cが目標値を超えている場合にはLDL-Cを50%以上低下させる』とする治療目標も併記されています。

CVD予防のための治療ターゲットと目標値 (1)
















【脂質検査は空腹時から非空腹時へ】

 
 薬物療法に関しては、PCSK9阻害薬(エボロクマブ)を使用した治療の対象について『最大耐用量のファーストライン治療(スタチン)やセカンドライン治療(エゼチミブなど)でもLDL-C高値が続く極めて高リスクの患者あるいはヘテロ接合体FH患者(および一部のホモ接合体FH患者)の他、LDL-C高値が続いているがスタチンに忍容性のない患者が候補となる』と記されています。
 さらに、今回の改訂に伴う主な変更点の1つとして、脂質検査を空腹時に行う必要性がなくなったことが挙げられます。これは、採血が空腹時でも非空腹時でも検査結果(総コレステロール、LDL-C、HDL-C)やリスク予測能に有意差はなかったとする報告を踏まえています。

 ただ、糖尿病患者ではLDL-Cが過小評価される可能性があるとの報告があることなどから、糖尿病や重度の脂質異常症、高トリグリセライド血症の患者には空腹時採血による脂質値の検査が勧められるとしています。



【食事の重要性】


 改訂GLでは従来よりも食事の重要性が強調されています。その背景には地中海食により心血管イベントのリスクが30%低下したとする2013年に報告されたスペインのRCT、PREDIMED試験などの成績があります。

 GLの生活習慣に関する章には、LDL-Cの低下や脂質プロファイルの改善で『望ましい食品』、『控えめに摂取すべき食品』、『たまに少量だけ摂取すべき食品』をまとめた表を掲載されていました。例えば、穀類のカテゴリーで『望ましい』のは全粒穀物、『控えめに摂取すべき』なのは精製された穀物が原料のパン、精製された米、パスタ、ビスケット、コーンフレーク、『たまに少量だけ摂取すべき』なのはペイストリー、マフィン、パイ、クロワッサンなどが挙げられています。

 一方、料理に使う油やドレッシングのカテゴリーで『望ましい』のは酢、マスタード、ノンオイルドレッシング、『控えめに摂取すべき』なのはオリーブオイル、植物油(パーム油やココナツ油を除く)、ソフトマーガリン、サラダドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、『たまに少量だけ摂取すべき』なのはパーム油、ココナツ油、バター、ラード、ベーコンの脂などが例示されています。


【コメント】

 脂質異常症は、内科系・外科系全ての領域で見られる疾患です。内科の先生に丸投げするのではなく、かかりつけ医として積極的に治療を行えるように勉強してください。

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